クルミと砂糖と干し葡萄

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「あれか」 ナンパか?痴漢か? と、目を逸らしたナンパ男を尚も見据えたお兄ちゃんに訊かれた事に、私は、触られてないけど、手を掴まれた、と。 ますますお兄ちゃんに抱き付いた。 ああ、やっぱり安心する。 「連れてきますか」 不意に後ろから声を掛けられて振り向けば、お兄ちゃんと知り合いらしかった、海の家のスタッフが、眉間にしわを寄せて立っていた。 「………浮き輪だけでいい」 深雪、それでいいな?と。 お兄ちゃんは、きゅ、と肩を抱く手に力を込めて私を見下ろすと。 ガキじゃ無くなったら無くなったで、やっぱり目ぇ離せねぇもんなんだな、なんて。 当たり前のような、そうじゃないような事を、しみじみと呟くと。 向こうの方で砂遊びでもするか、と、笑顔を浮かべた。 .
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