クルミと砂糖と干し葡萄

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「ねぇお兄ちゃん」 なんだか可笑しな光景なことは、客観的に見なくても、解る。 海岸の、端。 コンクリートの堤防ギリギリの砂浜で、私たちは大きな砂山を築いていた。 お兄ちゃんは、しゃがみこんで可笑しいくらい一生懸命で。 大きく開いたシャツの襟から、お腹の辺りまで、すっかりタトゥーが見えてしまっている。 「あの子、良かったの?」 置いて来ちゃって、と続けた私に、お兄ちゃんはサングラス越しに視線を向けた。 「……………連れてくれば、余計、気を使う」 面倒な奴だから、と唇の端をあげたお兄ちゃんの言う意味は、わかる。 わかるし、2人で来たいと言ったのが私なのも解っているけれど。 腹立たしいくらいに、楽しい気分に陰を差す。 “雅”がひとりで留守番をしているのが、気に掛かって、仕方ない。 .
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