クルミと砂糖と干し葡萄

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ねぇお兄ちゃん。 私、綺麗になったでしょう? お兄ちゃんに逢うために、私、頑張ったんだよ? お兄ちゃんに、逢う為だけに。 「…………だめ?」 「………」 お兄ちゃんは、その金髪を、砂を払っただけの右手で、掻き上げた。 黙って、しばらく私を見つめると、苦いような、苦しいような、微かな笑みを、浮かべる。 「………同じ顔して、何言ってやがる」 帰るぞ、と、やや乱暴に私の手を取ったお兄ちゃんは、素足で砂を踏みしめながら、ゆっくりと、歩き出した。 「お兄ちゃん、いや!! 帰りたくない!」 「…いや、じゃねぇ」 すがりつく私を引き剥がしたりはしなかったお兄ちゃんは、呆れた顔で私を見据えてそう言うと、どこで覚えたんだ、そんなセリフ、と。 わざと茶化したように、苦笑した。 .
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