クルミと砂糖と干し葡萄

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深雪さん! シャワー使ってください! と、今日の営業を終えた海の家の従業員が言うのを聞いた時には。 「…………うん」 私はすっかり元気を無くした後だった。 砂浜をゆっくり歩く間、あれ以上駄々をこねる訳にもいかなくて。 別に、今抱いて欲しかった訳ではないけれど。 何も、振られに行くことはなかった。 “タカノ”も言っていたじゃない? お兄ちゃんは、私を受け入れない。 “妹”以外の私を、受け入れない。 「深雪」 俯いた私を、気に掛けてくれるお兄ちゃんは、私の着替えの入った荷物を、渡してくれた。 “妹” 急に会わされて。 一緒に兄妹らしく、同じ家に住んだこともなくて。 毎日、お迎えに来てくれて。 母が帰る時刻まで遊んでくれた、綺麗な“お兄ちゃん”は。 幼い私にとっても。 今の私にとっても。 兄妹としての兄ではなくて。 うんと年上の、綺麗で優しくて、頼もしい“お兄ちゃん”。
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