クルミと砂糖と干し葡萄

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「……深雪、泣くな」 だって。 だって悲しすぎる。 お兄ちゃんは、私を可愛がってくれるけど。 優しくしてくれるけど。 「……なんで帰らなきゃ駄目なの?」 「なんでそんなに帰りたくねぇんだよ………」 お兄ちゃんの浮かべる苦笑は、私をえぐる。 わかっているのか、いないのか。 お兄ちゃんは、面倒そうに息をつくと、着替えも済んで、髪を梳いた私を、車に乗せた。 「…………夕飯、食ってから…やっぱり花火でもするか」 お兄ちゃんは困ったように笑うけど。 私の言う“好き”の意味を、わかってるんだろうか? 私は、お兄ちゃんが好きで。 それはもう、初めて会った時から大好きで。 恋、してる。 今、抱いて欲しかった訳ではないけれど。 私の言う“好き”は、そういう“好き”なのに。 .
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