クルミと砂糖と干し葡萄

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ドアを閉めて、車の中に私を閉じこめてから、お兄ちゃんは電話をかけた。 何を話しているのか聞こえないけれど、ふと、お兄ちゃんの顔に浮かんだ笑みは、とても柔らかくて。 電話の相手は“雅”である、とどうしてか、解ってしまった。 あの子は今、一人で居る。 私が、お兄ちゃんを独り占めしてるから。 私の居ない時は。 2人でどうやって過ごしているんだろう。 お兄ちゃんは“タカノ”の彼女と、どうやって過ごしているんだろう? 「お兄ちゃん、私、グラタン食べたい」 私は、電話を終えて運転席に乗り込んだお兄ちゃんを、見つめた。 メイドだなんて酷い、となじりはしたけれど。 独りで留守番なんて可哀想、と思ったけれど。 ずっと、お兄ちゃんを独り占めしていたのは、あの子。 .
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