クルミと砂糖と干し葡萄

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満月に近い、明るい月が出ても尚、私はお兄ちゃんを離さなかった。 文字通り、左腕に絡みついて、歩いた。 デートは、概ね満足だ。 願っていた通り、朝からずっと、お兄ちゃんと一緒。 お兄ちゃんは、私が帰りたがらない事について、何も言わなかったけれど、時折、時間を気にする素振りをみせた。 「………雅が…嫌なのか?」 疲れた様子は余りなかったけれど、都内のライトアップされた観覧車を見たいと言った私の我が儘を聞いてくれたお兄ちゃんは、車を降りると、煙草に火をつけた。 「お前を預かれる家なら、他にあるが……そっち行くか?」 「………え?」 私が、出されるの? “雅”じゃなく? ああ、いや、“雅”を追い出したい訳では……ない…と…… …………… ……………言える? .
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