クルミと砂糖と干し葡萄

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「無理だ」 「どうして!?」 駄目だ、ではなかった。 無理だと、お兄ちゃんは言う。 「そんなことの為に、俺んとこに来たのか?」 お兄ちゃんは、怒ってはいないけど、戸惑った様子も見せなかった。 まるで私が、こう言うのを知っていたかのように。 「……妹、だから?」 お兄ちゃんは答えない。 黙ったまま煙草を押し消すと、帰るぞ、と。 私の頭に手を乗せる。 見上げたままの私の視線は、お兄ちゃんの髪が、観覧車の色とりどりの光に反射して煌めくのを、追っていた。 .
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