五刻「灰雛と小さなオルゴール」

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でもなにかがだるい。なにかが渦巻いている。一部にある生への度を越した固執。 嗚呼それだ、気持ち悪い。。純粋な願いではないからだ……それが強欲の欲求の私欲の悪欲になっている蛆虫。 吐き気がする。 そんな白い霞みがかった雑踏の中、ふと視線を感じた気がした。 「…………気のせい?」 と、突然病院のロビー隅々まで届く怒号が聞こえてくる。 耳を塞ぎ損ねたことを強く後悔するような女性の金切り声だった。 「なんであの子を今更連れて帰るのよっ!? 助かる可能性が、少しでも長く生きられる可能性があるのよっ!!?」 男性側の声は、声が低いからだろうか……少し小さく聞こえたが、感情的だ。 「あの子はもう助からないんだっ!! 何度も言っているだろう!? いまの医療技術じゃどうにもならないんだ!!」 嗚呼、技術とかそういう問題だけで命を諦められた子か。
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