五刻「灰雛と小さなオルゴール」

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っと、また強く視線を感じる。 今度は確信する、間違いなく見られている。私を見れても、認識できる虫がどれほど居るものか……でもそれは間違いなく私を見ている。 (なに!?) 周りをくまなく見渡す。私の視線の高さその先に、私を認識しているものはない。 だから私はふと視点を落としたのだ。 居た。 その主は、小さな女の子。少しばかりか彼女より大きい子供に手を引かれている。彼女の兄だろう。 彼女は手を引かれながらこちらを見つめていた。瞳を逸らすことはなく真っ直ぐに、でもそれでいて柔和に、彼女は笑顔を向けている。
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