五刻「灰雛と小さなオルゴール」

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驚いた……否、有り得ない。ただですら見られても認識されにくくなってゆくはずの私が、凝視ならともかく笑顔を向けられているだなんて……。 「有り得ない……」 そして私はたったひとつ瞬きをしただけだった。でもその瞬間に彼女はもう兄の方を向いていた。少し嫌がっていながらも少しうれしくて、照れ臭そうな、そんな顔……。 さっきの笑顔とは別人の笑顔の女の子がそこには居た。 そしてその兄妹は件の喧嘩をしていた夫婦の元に向かっていく。 なるほど、そういうことだった。
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