五刻「灰雛と小さなオルゴール」

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周りは一気に和やかになり、彼女は周りの老人たちにも声をかけられている。両親はなにか腹を括ったような微笑みを送っていた。 ただ一人、兄を除いて。 みんな……偽善者だった。鼻から命を諦めて、可哀相だと自らの命と勝手に比べ蔑み、哀れみ、擁護する。偽善。 結局みんな命を諦めている、そう、彼女の兄を除いて。 そしてそれは彼女も知っている。 だから…… 「だからそんな哀しい顔をするのね……」 ふとみなの視線が外れたときに垣間見る表情が……真実だった。
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