一刻「灰雛は産声をあげる」

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「はぁっ、はぁ……はぁっ……!」 ―――ザワザワ……ププーッ!!……ガヤガヤ……。 真夏の暑さを街の騒音はただただ増幅させる。 今日も暑かった。気温は天井なしにうなぎ上り。とてもとても暑くて……。 アスファルトは焼けて、コンクリートのビルは今にもアイスのように熔け落ちそうだった。 少し先の交差点で誰もが交差点の信号待ちにうなだれる。 大袈裟に焼け死にそうだ、というほどに暑い。 でも、私はそれで息を切らしているわけではなかった。 平日の昼間にも関わらず大交差点の街のど真ん中にこれだけの虫が群れ、それらが呼吸をするが故に二酸化炭素が排出されて酸欠になったのでも、虫から蒸発する熱された臭い水蒸気でむさ苦しさを味わったわけでもない。 いや……ないとも言わないが……。 ともかく、主な原因は別にある。というより……そもそも原因であったのかすらわからない。後味の悪い白昼夢のあとの風景はあまりに元通りすぎた。 「……気持ち悪い」
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