五刻「灰雛と小さなオルゴール」

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私は興味を持ちはじめた。ううん、実のところはただの興味ではない。だって私にもお姉……。いや、それは違うか……。なにか気になる、ただそれだけ。 午前中の混雑が嘘かのように静まり返った夕方の病院。気付けば、誰にも気付かれないように(とはいえ気付かれるわけもないんだけど)パソコンに近付いて彼女のカルテを確認していた。紙のカルテならさっぱり読めないが、電子カルテは非常に読みやすくて助かった。彼女の名前は病室から確認済み。 姫乃 儚(ひめの はかな)。名前のままに儚い人生を送ることになってしまったらしい。その幼い身体を蝕むものは……EBウイルス。 「慢性活動性EBウイルス感染症」。EBウイルスによって最後には多臓器不全やガンを発症させ高確率で死に至らせる。 有効な治療薬は開発されず、研究のあまり進んでいない病気。
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