五刻「灰雛と小さなオルゴール」

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「ううん、なにも」 「お姉ちゃん、お昼にも居たお姉ちゃんだよね?」 「さあ……きっと人違いじゃないかな?」 私は咄嗟に答えた。が、これでは他の虫と変わらない……。 彼女の目は寸分の狂いもなく、私と先ほど顔を合わせたことを確信している。 思わず咄嗟の一言を後悔してしまう。出会いの最初の会話としては最悪な部類に入るだろう……。 少々狼狽気味の私の全てを悟ったのか、いや、嘘をつく大人の嘘に慣れてしまったのか、少女はすべてを理解したような表情を見せたかと思うと、驚くべき一言を投げてきた。 「ねぇ……お姉ちゃんは死に神なの……?」
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