五刻「灰雛と小さなオルゴール」

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命のやり取りが、人の素の私欲の極みが溢れ出る閉鎖した空間に閉じ込められ、あれだけいままで人間を観察をしてきたであろう、他人とも家族とも、容姿からは検討もつかないくらい大人び過ぎくらいに落ち着き払っていた小さなしっかり者は、見たこともないはにかにっぷりを見せ付けている。 間違いなくなブラコンだ。が……私も人のことは言えないか……。 「伝えてどうするの?」 彼女は首をふるふると横に振る。 「なにも……。ただ……」 顔を上げ、柔らかく優しい笑顔を私に向ける。 「伝えれたと伝えられなかったじゃ、全然違うから」 そう言ってまた笑顔ではにかむのだった。
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