五刻「灰雛と小さなオルゴール」

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通された病室は冷たく寂しい個室。 なんて冷たい白い部屋だろう……こんな場所に閉じ込められて心が冷え切らないほうがどうかしている。夏の夜を迎えるというのに、その病室は全開に開かれた窓から吹き込む風のおかげで、火照るはずの部屋の熱を冷まし、少しひんやりとすら感じる風を部屋に迎え入れている。 この部屋に長年閉じ込められて出てくるその笑顔は一体なんなのだろう? にこにこ笑う女の子は、ベッドの横にある長時間座っても大丈夫そうなお見舞い用の椅子をぽんぽんと小さく細々しい腕で叩き示している。 「ねぇ……お姉ちゃんはどこから来たの?」 「ロクなところから来てはないのは確かね……」
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