一刻「灰雛は産声をあげる」

9/12

115人が本棚に入れています
本棚に追加
/382ページ
「聞いてんのかよーっっ!!あぁんっ!!?」 嗚呼、聞こえてるよ、無意味に騒々しい鳴き声ね……。 ―――消えろ!! 「うるさい……」 「ああんっっ!?」 「……うるせ……!?」 ―――パァンッ………――― 一音一旋、言葉は断ち切られた。 刹那高く響いたその一音に。 一帯が……。 凍て付き。静止した。 ―――びちゃっ――― 刹那、私のメガネの片方が曇った。 赤黒く。 気持ち悪いほどにねっとりとした生温かさ。 ―――人が――― ―――爆ぜた――― 必然、静止した世界は一瞬で狂気に変わった。 すべての表情という表情は引き攣り困惑と恐怖の色に塗り替わる。 私は無表情でその場を、立ち去った。 その冷たい眼差しは、メガネの赤黒いかすみに、視界を奪われたままだった。
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加