115人が本棚に入れています
本棚に追加
川の水際にしゃがんでふと水面に視線を向ける。たまにしか通わない学校からの帰り道。
指はちょんちょんととあるものに触れている。こんなに頬を突っついているのに不思議そうに私を見つめ続ける小さな鳥の雛がそこにいる。灰色というよりは黒ずんだ色の羽毛を持った雛。私の灰奈という名前に妙に重なる。
排気ガスで汚れたのかなんなのか、その煤けた羽に触れたがるものも居ないだろう。周りにいる鳥たちの中でも一番ひどい様子だった。歩いていた私の横を同じ速度で進んでいたこの子と目があって、いつの間にかしゃがんでこうして遊んであげている。
夏を迎えた空はどこまでも青く、広い鴨野川の川沿いを歩くと避暑のためか昼間だというのにカップルが群れて既に見た目にもご迷惑な空気をかもし出している。一人で居る私はむしろ珍しいらしくそれらから不快な視線を向けられる。どうやら私は長居しすぎたらしい。
「……」
その普通なら羨むだろう光景を一瞥しながら、ひとつ心の中で深いため息をついて立ち上がる。雛はつぶらな瞳でただその後姿を見送った。
川沿いから角を一つ曲がれば五月蝿いほど賑やかな繁華街に入る。
すぐそこには周辺で一番大きなゲームセンターがある。
昼間だというのに既に中は学生や何をしてるかも分からない連中のグループで賑わっていた。
『仲間』とか『友達』とかいうやつらしい。
最初のコメントを投稿しよう!