二刻「灰雛に関して知り得るいくつかのこと」

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「そして、これらから分かる通り、この両親の外からは見えない異常性。それが、優劣差別主義。自分達をあまりに優れていると考えているために、自分達より劣る人間達を同じ人間と思いたくもなく思われたくもないという凄まじい差別感情。彼らにとって、優秀でない人間などゴミでしかなく、その証拠に職場では自分が優秀でないと判断した人間達を次々と別の職場へと追いやっている。問題視されないのは、彼らが優秀故に、誰も非難できないから。その絶対的な自己優越主義は、人間関係、家庭や友人・近所付き合い、学校の保護者との付き合いにまで及んだ。それが……」 『それが、この家庭には普通だった。常に他人を見下し、差別し、自分の優秀さを相手に理解させ、価値観を押し付け、酔い痴れる。彼らが家庭外に出て他の人間と同じ社会に立ったとき、私は彼らが人間を見ている目をしていたのを1度たりとも見たことはない。それは……姉さんも例外ではなかった……。 もちろん私もその優劣の差別思考を産まれてすぐから植え付けられる。人間を、他者を有無を言わさず蔑み、優越感に浸る感覚。人間の努力を嘲笑う感覚、それをすべて植え付けられた。 でも私は……彼らや姉さんとは、異なる生物だった。私はすべてが劣性細胞だったのだから。 それは私が学校という集団生活を送る教育機関に入ってからは、鮮明なものとなっていった。私は何故か下等な劣性種と同じ場所に通い、留まり、教育を受けた。でも、私の目は姉さん達と同じ……人という下等種を見下す視線しか送ることはしなかった。否、見てすらいなかったのかもしれない。私はまだ幼かったこともあって、それは普段の態度にも多分に出てしまっていた』
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