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そう……思っていた……。
『なぜだと思う……?』
信じて居たかった……。
『何故だと思う……?』
いつからだろう……私が優しい姉さんと目を合わさなくなったのは。
『そうそれは虚無・虚栄。私の幻想、私の願望』
だからあの日、偶然瞳を合わせたあの日に、全てを失ったんだ……。
「ら、なにこれ?拾ってきたの?」
「うん、かわいいでしょ?!お父さんとお母さんに訊いて、ここで飼ってあげたいの」
「へぇ~、優しいんだ……」
――ギャンッッ!!!!!!!!――
「へ……?」
私は凍てついた。
姉さんの眼差しに……その目の形に色に……
そして、鈍く聞こえた捨て猫が外に蹴り出された音に……鳴き声に……凍てついたんだ。
「ね……? さ……? ん……?」
「はぁ………
こんな汚いゴミ拾って来てんじゃねぇーよ! どこの雑種かもわっかんねぇうす汚ねぇものをよぉ……うちのペットの分際で仲間連れてきてんじゃねぇーよっ!」
姉さんの目は死んでいた。死んだ目で、ただぬいぐるみを愛でるように遊んでいたんだ。妹に対する可愛がりや、優しさなど、微塵もない。それはただ、哀れな下等種に慈悲をかけて優越に浸り心奪われている、自らの慈しみの深心に心酔している唯我独尊の優良種の姿しかそこに無かったんだ。
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