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「それにしても……あっちぃ……」
思わず空を見上げる。
太陽が沈んでからも、まだまだ地上は暑かった。
ここがビルの屋上なこともあって、より日中の灼熱が蓄積されていることも原因なのだろう……。
俺は汗をかくが、まりーは一切かくことがない。
「……」
それが羨ましくも、哀しくもあった。
ふっと少し手の力を抜いた書類は、強い風が吹き抜けるビルの屋上から空に高く舞い上がる。
たった数ページの灰奈の人生という名の経歴は軽々と空に持ち上げられて……
遠くきらめいて消えゆく。
「さて……」
真っ直ぐ目を据える。
神の雛は何色に染まるだろう。
茜から青黒く染まりつつある空を見上げ、そんなことを考えながら目を瞑る。
そこにはただ……ほの暗い瞼の裏がどこまでも奥深く続いていた。
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