三刻「灰雛は血染めの羽衣を纏う」

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今日中に私は家を去ると決めた。 なにを迷うことはない。家出というなら、両親というものはうちの優良種がそんなことをするわけがないと最初から無かったものにするはずだ。だからこそ彼らには、むしろ好都合。 持ち物は……衣一枚あればいい。 目もいつの間にか不思議とメガネなしでハッキリと見えるようになっていた。 たぶんもう……私はなにか違うものだから。 人ではないから。 だからなにも気にしなくていい。そう自然と感じ取れる。 私には思い入れの深い服があった。 ある日を境に押入れの奥に仕舞い込んだ服だった。 姉さんが通った高校の制服、それは純白の白を映えさせた制服。スカートには紺色の太めのラインが走っている。 そしてそれは姉さんの名前、白奈と相まって、とても姉さんに似合っていた。 私は憧れた、その白さに、世界が洗われたような白さに。姉さんが立っているのは とある日に姉が憧れの視線を送る私に哀れむ目を向け、作られた笑顔でひょいとクローゼットから予備の制服を取り出して手渡してきた。 『私は必ず毎日洗うから、もう一枚は灰奈、あなたが似合うようになったら着なさい、きっと似合うから』そう優しい嘘をついて。 姉さんが自殺したとき着ていた服も……その制服のままだったっけ……。 袖を通して鏡を見る。 「似合わネ……」 自分に吐き捨てた。 白い制服は、短くなった髪とともに外からの生ぬるい風に揺れた。私は神になる。そして、この制服のような純白な世界を、取り戻す。 私がやるんだ、私にしかできない、私がっ!! 「神だ」
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