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たいていの蛆蟲がこうやって自らの刻を止めるか、妄想・幻想へ逃げ続けるかを選んで、生きることがどれほどの拷問で屈辱にまみれるか……分からずに死ぬの。
分かっていても言い訳にまみれて醜く知らないフリをして。
直後、なんの前触れもなく、少女は歩みを進める。
造りモノの金色の髪が乱舞する。そこに雑音は無い、あるのは重厚なそれでいてけたたましく甲高い金属と金属が重く重く擦れ合う音。
「私が否定してあげる……」
その幻想のようなコンマ以下の世界の中で、少女は
―――瞬前―――
――爆ぜ裂けた――
少女が寸前に居た場所には白が際立つ制服の黒髪少女。
べっとりついた紅い水玉模様が沸きあがる夏の熱気に似合っている。
誰か見ていただろうか。
いや、見ていてもいなくても、別段違いはない。この真夏の幻想の中の出来事を現実と捉えるまでにはまだ時間がかかる。だから……見えていただろうか……彼女の顔がゆっくりと歪んでいったのを……。
その笑みを……誰かが。
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