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少し間隔を空けた横隣で並んでいた中年男性が嗚咽を漏らしたのはその直後だった。
堕ちた少女と、紅い水玉模様の制服を纏い影で目元が見えないものの口元が釣り上がった少女。
途端、男性は怯えた様子でのけぞってゆく。
蟲どもの泣き叫ぶ声が、ぐらぐらと沸き立つ幻想を引き裂いたのは、わずかその数秒も後の出来事だった。
――自ら選んだ尊厳の『シ』―― と
―人に選ばれた犯された『シ』―― は、
異なるの。
そう。
私は蛆に尊厳など与えない、誰が与えてやるもんかっ!!!
姉さんと同じ結末なんて与えない……唯我独尊の自己満足で死なせなんかしない……。
絶対に……そんなことをさせない……!
誰一人……!
―――ギッッ―――
口の奥を噛み切った感触があった、鉄の独特の好ましくない臭いがした……。
「そうなんだ……神様でも痛いんだ……はは……」
素知らぬ表情で駅の改札を出ていきながらそうつぶやいた。
なぜかあの夜から、私の存在にはみんなあまり気付いていないらしい。どこへでも自由に私は行ける。
間も無くひどい頭痛に悩まされるだろう……反吐がでるような。
でも、それでもいい……教室のゴミを全て片付け切ったような清々しさと比べたら、それくらいの苦痛は別段構わなかった。
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