三刻「灰雛は血染めの羽衣を纏う」

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「くそぉ!! くそぉくそお!!!」 嗚呼、蟲の鳴き声だ。 それは蟲が作る創造物、その中には私に美しいと思わせるものもあるけれど、それをたくさんの若蟲が作り出している学校という名の小さな社会の小さな限られた箱庭の中から聞こえてきた。 海が近くにある大きな美術学校。 私は別の場所から覗くことにした。 ――コンコン―― 「入りますね……?」 「あ、あぁ……」 「先輩……残念、でしたね」 「あぁ……」 「大丈夫ですか……?」 「……大丈夫。まあ、これ一度がチャンスじゃないしね……。審査員の目に留まらなかったんだから、仕方が無いよ」 空元気に笑ってみせる。 が、そんなことはない、もう二度と訪れないかもしれないチャンス。 コンクールの最終専攻、そこにまで作品が残ることなど、卒業間近の俺には……もうないだろう。
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