序刻「灰雛が産まれた日」

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でも、そう、あるの。 本当に笑うことも。心の底から、お腹の底から。 それは人を見下した笑い声……。 あれは本物。 本当の笑い声。 聞いたことがない? 嘘。 そんな笑いをしたことがない? それも嘘。 人ごみにぶつかりながらたまに軽蔑される視線を感じつつ呟く。 「くだらない」 私が考えてあげる必要はない。なぜ私が人間のことを考えてあげなきゃいけないの? 人間=蛆虫が自身の心を守るために他者を考えるだけの世界で私が他者を考える必要なんてない。無意味。結局全ては保身のための偽善。 それで誰かを傷つけても、誰かに傷つけられても、世界は何食わぬ顔で流れていく。見て見ぬフリをし続けて。
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