三刻「灰雛は血染めの羽衣を纏う」

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―― コツ コツ コツ コツ ―― 階段を上る音は、とても静かに小さく鳴り響いている。 ―― キッ ギィィィィィーィ ―― 開く屋上の扉の音は、 いつもより重く、 重低音に重く、腹の底に響くように感じた。 まるで……なにか重たい枷が外れるような……そんな………。 潮風が吹き抜け……さざ波が近くに聞こえる、そんなこの学校の海が見える特等席の屋上のわりと低めのフェンスの間近に如月後輩は居た。 フェンスが少し低いというのは確かに危険ではあったが、さすが美大だけのことはあって、生徒達が屋上から風景の絵を書けるよう、生徒達を信用した上で、このような高さにしてくれているのだ。だからこそ目下の海は、とても綺麗に美しく見えた。 「如月……?」 「……」 返事がない、手が動いているところから見てデッサンに集中しているのだろう。
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