三刻「灰雛は血染めの羽衣を纏う」

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「だって、パパが言うんですもん。『ああ、今年は彼が優勝だね。この才能はズバ抜けている。手直しの箇所も必要ないほどに完璧だ。いいかい? 冷花。お父さんの才能に囚われたりせずお前もこういう絵を描きなさい。お前の絵は、模写のようだ』って」 手が一瞬緩んだ、その瞬間だった!! 「模写じゃない、模写じゃない!模写じゃない、模写じゃない、模写じゃない、模写じゃない、模写じゃない、模写じゃない、模写じゃない、模写じゃない、模写じゃない、模写じゃない、模写じゃない、模写じゃないっっっっっ!!!!!! 私は私だ、誰の模写なんかでもない!! お前に分かるか?! 絵がちょっとうまいというだけで、周りに父と同じような才能を求められ、追い詰められ、うまくなったと思ったら、模写だ! 真似事だ! といわれる気持ちがわかるっ!? わかんねーよな、そうだよなっ! そりゃそうだ……てめえにゃ才能があるんだからなっ!!!!! 分かってたまるかよ!!!!! ああ、そうだよ、私だよ、絵を細工してやったんだ、何が悪い!? 評価されてたお前の絵を、ズッタズッタにしてやったんだよ、お前の夢もろともなぁ!! だけどそれがなんだ! なんだってんだ!? お前にわかるか!? 産まれながらに勝手に期待されて、勝手に仕立て上げられて、勝手に評価されて比べられる気持ちが、てめーにわかるかっ!? ここまできて、最終専攻、周りが認めてくれる、千載一遇のチャンス! 周りが私の作品を私の作品として認めてくれるこのチャンスの重さをお前が分かるかっ!?!? わかるわけねーよなぁ? 才能があればまた描けるんだもんなぁ?????」
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