三刻「灰雛は血染めの羽衣を纏う」

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「ほんと……なのか……?」 俺は知っている、如月杏(きょう)という名を。いまや有名作品には必ず出てくる、魂を表せるという作画の才能の持ち主……彼の絵は生きている、いつだって生きている。作品が終わったあとも、その描き出された人物は死ぬことのない……。 俺の最も尊敬するクリエーター。その人が……。 「俺の絵が……すばらしいと…………?」 「はい?」 うれしかった。 それがいまの後輩如月から出たでまかせだったとしても、それがなによりうれしかった……俺は幸せだった、俺の絵は、生み出した魂は評価されていた。誰の目にも心にも届かなかったんじゃない……! 誰かにちゃんとその心を伝えていたんだ……。 うれしくて……うれしくてうれしくて……うれしくてうれしすぎて身体に力が一切入らなかった……。 「お前……何泣いてんだよ……?」
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