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一つ……強い風が吹いた。風向きは山風に変わる時間だった。
「だから……死んで……?」
彼女は笑った。目は……冷たく、紅く……輝いた。
瞬間、俺の身体はフェンスの向こうに投げ出される。
嗚呼、夕日が綺麗で、茜空が美しすぎて、海が輝いて……殺意の瞳に染められた少女が一人、屋上から堕ちていく人間を見ている………。
冷たい、冷たい視線で。
それは朱色の世界に咲いた、冷たい1輪の花のように……。
なんて……なんて綺麗なんだろう………。
俺はこの世界を何色でキャンバスに描こうか……。
そうだ……紅がいいな。紅い、紅い、紅色……絵の具が欲しいな……ああ描きたかったなぁ………………。
――ドスッ――
紅い紅い、血飛沫がキャンバスを染めて、紅い絵の具は止め処なく彼に必要なだけ湧き出ていた。
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