三刻「灰雛は血染めの羽衣を纏う」

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有り得ない!! 私がフェンスからすべるだなんて! しかも後ろ向きに……! なに、なにがいま起きたのっ!? ――ドサッ―― まだ……生きて……る? 嗚呼……あそこから堕ちたんだ………。 ふ~ん……。やっぱり高いなぁ……すっごく高いなぁ……あそこにはずっとは居られなかったんだ……。 綺麗……。 夕日が綺麗で、茜空が美しすぎて、海のさざ波が心地よく聞こえて……きっと海は輝いていて綺麗なんだろうなぁ……。 あの子……誰だろう……。目がかすんで見えないけど、ぼやけて見える少女……感じる視線は殺意に満ち満ちていて、堕ちた私を見下ろしている。 冷たい、冷たい目線で。 力無く首が……横にもたげた……。 涙が………出そうになった……。 ううん、すべての感覚は麻痺していてわからない……けど。 「わた……し……ないて……る………?」 紅い紅い顔をした彼に……私も紅い紅い顔をして、夕陽に染められたのか……死の際に紅潮したのか……。……そう、っか……。そうだったんだ……。私はどこかで彼が優勝して遠くにいってしまうことが怖かったのかもしれない……。 「わた……し…す……きだ……た………の…………ね……………せ………………ん………………ぱ………………………」 .
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