四刻「灰雛と日常と現実と非日常と非現実と」

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―――ミーンミンミーーーン……… 世間は夏真っ盛りだ。黙っていても暑いし、外を歩いているなにもかもが腑抜けた顔で地面を這っている。ざまあみろ。 私は人間と根本的構造が異なったらしく、汗もかかなくなった上に、暑いとも感じなくなった。言うなれば、いつでも適温。完全なる勝ち組。 が、この光景は容赦ない。自分は暑くなくとも、この光景が過去の記憶を刺激して、私に暑さというものを感じさせる。 皮膚や焼けて、嫌にじわっと表面に汗が浮かぶ不快さを思い出してしまう……。 こういうことで人間であったことを後悔するというのも、かなり後味が悪い。 「きもちわるい……」 私はいま精神を研ぎ澄ませて、ある物を探している。今日はわりと集まりが悪く、お昼の1番暑い光景を目の当たりにする時間になっても揃っていない。 まあ、研ぎ澄ませるだけで、それの場所がわかったり、集めやすかったりするのはかなりありがたい能力が備わったものだと思うけど……、錬金術とか、科学的にも説明できない大魔法なんてものは有り得ないのだなと、とことん実感する。この世に在るもの全ては、やっぱりこの世の理から逃れることなんてできない。異常な力を手に入れてもそれは理に沿ったものでしかない。 私が神にせよなんにせよ不便なところは必ずあるのだから。
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