四刻「灰雛と日常と現実と非日常と非現実と」

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「いらっしゃいませー!」 少々遠くに、社内規定で決められた120%のスマイルを客に向けている店員の声が再び聞こえる。 マッドシェイクを飲み始めると、一度少しだけ私はそちらに目を向けた。 私は思わず目を見開いてしまった。 そこに居たのは中肉中背の、年齢は20歳くらいだろうか、イケメンと呼ばれる部類だろうが愛想笑いを浮かべて店員と話す辺り、男を下げている……どこにでも居そうなただ周りに合わせているだけの蟲。 まあ、それはどうでもいい。 目をひきつけたのは、その隣でぴょんぴょんと跳ねている、小学校低学年そこらのまるでドールのような美しさの少女だった。 小さなリボンで結んであるツインテールにフリル服がよく似合う女の子は、先ほどからぴょんぴょん、ぴょんぴょんとレジの前を跳ねている。 絹糸のように滑らかで艶やかな白色の髪を上下させては、期待の眼差しをその男に向けて送っている。少なくとも絶対に日本人ではないだろう……。 それにしても不思議な組み合わせ……というよりBad Couple!!! でも分からないのは、ドールのような、私ですら咄嗟に目を奪われた少女が何度も跳ねるのを、店員はまったくと言っていいほど無視をして、男のほうだけを見ていること。
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