四刻「灰雛と日常と現実と非日常と非現実と」

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この状況だけでも十分に違和感なのだが……その光景には別にとても強い違和感と嫌な予感を覚える。 接客業において、客に視線も送らず無視し続けるということはありえない……ましてや日本人離れした中世の中庭が似合いそうな少女が目の前を飛び跳ねているというのに。それはつまり……。 「フィレオのランチセットを、あとドリンクはオレンジジュースで」 その注文に小さなドールは明らかに顔をむっつりさせ、明確な不快感を表明しながらも、ぴょんぴょんと跳ね続けていた。 店員は相変わらずその状況を無視したまま、笑顔で男の注文を繰り返す。背後霊ということもないだろう。残念ながら、私に霊感なんて備わっていない。 男のほうもその少女に気付くそぶりはみせず、1名分のセットをもらい、こちらに歩いてくる。
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