四刻「灰雛と日常と現実と非日常と非現実と」

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「……しつこいですね、なにかご用でしょうか?」 「えぇ、それもあります。それと……先ほどはちょっと失礼したのかなと……どうも対人関係には不慣れなので」 「そうなの。気が合いそうですね。私もですから」 始まったのはあまりにぎこちない会話。 焦り、急いでここまできて、振り返ればすぐ先ほどの2人が立っている。 嗚呼……追いつかれるというのはどことなく気付いていた……。 だから焦っていたのだ。 ただ、焦りに混じって感じる逃れたいほどの畏怖に似たものがなんなのか、まだ私には想像もつかなかった。 「シェイク♪シェイク♪」 そんな中、まったく違う雰囲気を醸し出す声の主が一人。 西洋の古城がピッタリと似合うであろうドールの少女はつい先ほどとは一転ニコニコしながら、シェイクのストローを咥えている。 「まりー……」 「あ……ごめんなさい……。えと……私、まりーって……言います……」 申し訳なさそうにドールがにっこりと微笑む。それはまるで、聖母のような微笑みだった。 「……はぁ」 あまりに腑抜けた会話に、一度持った緊張感は呆気なく崩れる。 恐らくは逃げてもどうせ無駄なのだろう。それに、敵意のない挨拶に逃げ出す理由もなくなってしまった。
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