四刻「灰雛と日常と現実と非日常と非現実と」

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「……ねぇ。なにしようとしたのかな? ねぇねぇ……私の聖(ひじり)になにをしようとしたのかなぁ?」 すぐ正面に、別の人間を認識する。そう、いましがた地面を砂のように埋没させたのは奴ではない、この子なのだ。 その見るからに幼さの残る表情のクマの着ぐるみのようなかぶりものを頭からすっぽり被った少女は、嫉妬に狩られたような表情で私を嘗め回すように見つめている。 だが、当の狙った相手は涼しげに窓枠の抜けたビルの風穴にちょこんと座っている。「へぇ……」と不敵に笑みを浮かべながら……。 結果的に言えば、何も起きなかった。そう、何も……。
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