四刻「灰雛と日常と現実と非日常と非現実と」

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ぐいっ、ぐいっとめり込むように締め付けられる心が感じるものは恐怖感ではない。恐怖感のようではあるが、『無』。あのときと同じだ……。 死を感じるんじゃない。死など感じても怖いものか……。これは『無』だ。『無』に支配され、『無』に囚われる。一歩踏み込めば、次の瞬間に自分というものはない。そこには『無』しかない。いま『在る』自分という存在がそれを全身の感覚で感じ取るためにそのあまりの恐ろしさから本能的に硬直する……。自分というそのものを自分から消し去られる絶対的『無』が隣り合わせにあるのだ。 全てを『無』に帰されるその純粋な恐怖が、否、畏怖に飲まれるということ。 「ねぇ、この子ダメだよぉ? もういいでしょ? この子は聖には要らないってばぁ~……」
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