四刻「灰雛と日常と現実と非日常と非現実と」

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「!? なん……で……!」 ひどく衝撃を受けた表情しかできない私を尻目に、ユリアナは嫉妬の表情で私を睨みつける。 部下など……あり得る筈もない。姉は、お姉ちゃんは……毎日これでもかというくらいまじめに学校に通っていた学生だ……。なにをでたらめを……!? 「さあ……? ま、今日はこいつが馬鹿しなければ見て帰るだけのつもりだったし。目的達成~万事おっけ~ってことで。しばらく観察させてもらうよ。使えるようになるまでせいぜい壊れないようにな?」 直後、聖という得体の知れないものは変わらぬ気持ち悪い笑みのまま強く大地を蹴る。瞬間、首元に光る白銀の十字架をちらっと目視した。 残されたブロンドの髪を覗かせるユリアナは「速いよぉ……」とぶうぶうスネながらも自らも蹴りあがろうとする。彼女の服が少し風を受けてたなびきだしたとき、彼女の手首にまきつけられた細い鎖に同じく白銀に光る十字架を確認する。 だが、確認するだけ。それ以上なにも視界に入ることは叶わなかった。集中力はもはや霧散し、背中から忍び寄ってくる『無』にどうしてもほとんどの意識を奪われる。本能的畏怖。
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