四刻「灰雛と日常と現実と非日常と非現実と」

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そして私は……ただ取り残された。 ―――パチンッ!! と、一音高い音が空に響いた。すると瞬く間にオーロラは消え、すっかり茜に染まった夏空を私に仰がせる。 「はぁっ……! はぁっ、はあぁっ……!」 荒々しい呼吸とともに流れたのは冷や汗。 以前と何も変わらぬ結末……。なにをするわけでもなく、なにもできず……力とは……なんなのだろうか……。 世界が戻ると同時に私に背後から忍び寄っていた『無』は消える……。同時に、金縛りに近いそれからも解き放たれる。 張り詰めた緊張から急激に解放された反動で、細くなっていた呼吸は過呼吸となり、早急に酸素を身体に取り込もうと肩で息をする。無駄に人間らしい習慣だ……。 「はぁっ! ……かはっ。ペッ! ……はぁっ、くそっ」 染まった直上を仰ぎ見る。 「くそう……! くそっ、くそっ!! まただ! まだ比べられるのかっ、私はああっ!!」 そう、それが本音。いま出てくる、私のいびつな本音。 「まだかっ、まだかっ!! まだなのかっ!! 死んでも、時間が経ってもっ!! まだなのっ……私はまだ……」 比べられるの? その言葉は……喉から出ることはなかった。そんなの悔しすぎるから……。それを認めたようなものだから。
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