はまなすの頃

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それまでも幾度も、 父が兄の部屋に夜入って行くのは知っていた。 けれど、小言や折檻が始まると思うと胸が痛くていつも、耳を塞いでいた。 その夜、僕は珍しく夜中に急に小便にいきたくなり、真っ暗の廊下に出た。 兄の部屋の扉が少しだけ空いていて、光が漏れていた。 特段、意味はなかった。 ただ、おやすみを言って、扉を閉めてあげようと思っただけだった。 けれど、隙間から目に入った光景に、僕は、尿意も何も凍りついた。
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