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ーー結局、真宮の身体どこからも確認できるほどの空力、電気量の発生はなかった。
途中いたたまれなくなったか入野が止めたが、真宮はそれを無視。
ようやくやめる気になったのはグラスの中の氷もすっかり融けきった後だった。
「……なんでだぁ…確かに身体検査の結果はでたのに…」
「け、計測器が故障でもしてたり……」
すっかり消沈した真宮を前に少し前まで笑うことをやめれなかった入野も今は哀れんで言う。
「そうなのかぁ……でも、これじゃああんまりにさぁ、笑いもんじゃん……」
「そ、そんなことーー」
ない、とはもちろん言えない。
何故なら今さっき笑っていた本人だから。
真宮は基本面倒くさがりの平和主義だが、それでも自らに能力の片鱗を感じたことに思うところあったのだろう。
しかしながら、思うところの要因は入野含めた周りのlevelをネタに真宮をからかうことをやめなかったことに基因している。
故に単純な"能力があるから嬉しい"ではなく"馬鹿にされなくなる"という何とも歪んだ方向に目的意識が向いたとも言えた。
「チクショウ……チクショウ……」
「……」
だが、嘆く真宮を見て入野は安心していた。
真宮に能力が発現しなかったことに。
そして、反面で真宮もそうであった。
どちらも恐れていたのだ。
思考の先にあった、その能力が二人の日常を変えてしまうことは目に見えていた。
ーーそう、
ここまでだった。
どちらの幻想も既に壊されていたことに二人は気づくことはできずーー、
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