128人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハァ……ハァ……不幸だぁぁぁぁぁーーっ!!!」
夏休み前日の七月十九日、入野と別れたファミレスからの帰り道。
先ほどまで自分が通ってきた鉄橋付近の川沿いを走る男を向かい側でただ、傍観している真宮。
どうやら男は数人の不良グループに追いかけられているらしく後方には人影が見えた。
「不幸ね……本人がそう思ってりゃそうだわ……
ーーって、でたな!不幸男!!
……あー、チクショーもうちょっと、近くで見たかったなぁ……
あいつ、逃げられっかなぁ」
他人事極まれりな発言を嬉々としてする。
手にしている紙パックのドリアンオレをすすりながら。
「……!雷……?」
ふいに走った青い閃光が鉄橋目掛けて落ちたのを確認。
あきらかに自然発生したとは思えないそれが、次の瞬間に町中を照らしていた人工灯の光を奪う。
「……停電だ!そういえばあの電化女……大袈裟なことを言ってくれたな……」
連想的に思いだされた昨日出会った少女……常磐台の超電磁砲を頭に浮かべ(……まさかな)と真宮は思考する。
この停電が彼女の仕業であったのなら、今すぐにでも先ほどの雷光が落ちた場所に向かい文句の一つでもたれたいものであった。
ーーだが、彼はそれをしない。
「……まぁ、仮にちこっと特別な能力がでたんなら色々聞いてもよかったけど……」
……利用する……というと少し大袈裟だが、事実それに近かった。
昨日の『能力がわかったなら教えてやる』という発言もあくまで表面的な意味で、真宮にとっては"色々知ってるlevel5の知り合い"がほしかっただけだ。
しかし、それは真宮が考えていた、或いはそれと同等以上の能力の発現が条件で何もないことになった今となってはなくてもいいものとなっていたのだ。
従って真宮が彼女と進んで関わる理由もなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!