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ーー鬱蒼とした路地裏に外部からの光は星と月のみ届いていた。
まるで陸の中の孤島。外側を華やかに彩る学園都市から切り離された、溝鼠が這う汚ならしく、穢れた世界。
この街の裏路地からはそんな黒い事情を兼ねた、表裏の片側のような陰惨な雰囲気が漂っていた。
平和を好む真宮はここを嫌う。
真宮だけではない。街の学生の大体はこの場所に危機と不安を感じ出来るだけ近寄らないようにしている。
ーーだが、今日この日の真宮に限っては、その限りでもない。むしろ、この場所、存在を神に感謝してもいい。
(ーー科学の街にも神はいるのか?いや、なもん居たらそもそもこんな状況にならねーよ……)
つまらない皮肉を自分に言い聞かせる。
「……痛っ……ゼェ…ゼェ…さて、これからどうすっか……」
ーー前の傷と入り組んだ迷路状をがむしゃらに走り続けた彼は休息のために、青いポリバケツを挟んだ壁際にもたれる。
周囲にフルフェイスらの気配がないか警戒しながら思考を続けた。
先ほどの、奴らが自分を殺す理由や原因を探るのではなく、殺されずにここから逃げ出す方法をーー。
(……まずは助からねーと
殺される理由を知って生きれる理由になるわけでもない
ーー状況の整理からだ
ターゲットは俺、目標は抹殺。生け捕りってのも考えられるがどうにもあのライダー女の口ぶりから考えるにこれは除外……
相手の人数は他に待ち伏せや合流がなければ四人。
俺のことを超能力者クラスに考えてるならあってもいいんだろうけど、それなら河川にいる時点でやってるか……そういえば『正面から』とか何とか言ってたがまさか、あれは俺の『殺しかた』を言ってたのか?)
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