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だが、それは決して容易なものではない。
いくら数年間住んでいる地域とはいえ、普段からここを使用しない真宮にとって、裏路地は地の理のない初見の場所に変わりはないからだ。
ここから無作為に道を選んでもまず、余程の幸運でもなければすぐに大通りへは辿り付けないだろう。
今日のこの場にいる経緯からそんなもの(幸運)に頼るわけにはいかないことも真宮は重々承知していた。
つまりは今、自らが知る極々限られた土地勘の情報から得うる選択の余地に頼る他ない。
出された答えは2択。
先ずは前の様にただ、闇雲に周りこの裏路地の出口を探すか。
こちらは言うまでもなく愚作。
と、なればもう片方ーー
(……今来た道を戻る……か)
訂正だが、『限られた』ではなく『唯一』の土地勘である。
真宮は奴らから逃げるために辿ったルートはおぼろ気ながら記憶している。
本人にとっては無我夢中の意識でよくもまあ、覚えていたと褒め称えたかった。
恐らく、フルフェイスらはここら辺の地理を把握している。
変電施設まで止めるようなやり口だ。真宮が襲われた場所もおおよそ相手方能力にとって有利で尚且つ人通りの少ない、真宮の帰宅通学路。
となれば、この裏路地の存在を知らないわけではないだろう。
ある程度、構造がわれていればあの四人で効率的に真宮を追い詰める為それこそ、詰め将棋のようになる。
が、それを逆手にとらえれば戦力の分散に違いない。
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