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追う人数が減れば同時に四方へ傾ける空間把握能力も弱くなり、能力の危険性もそれに比例する。
能力の弊害は薄く、注意は分散されるのだ。
加えて最初の地点での戻ることで相手の虚をつきやすくなる。
生物の個体維持本能は何らかの危険により逃走した最初の場所に意図して戻ることを躊躇う。
だが、本能的といえば相手方も同じ人間であり『自らやろうとしないことは相手もやらない』と、自然ではそう考える。
もちろんその点を補うのが理性であるため『戦術』という戦法点でも『学習能力』という生物的点でも穴はある。
だが、少なくとも地理の利点を相手方に取られていると仮定するなら、同じ利点を取るには実際に知っているルートでやり過ごす他ない。
ある隙を真宮が縫って通り抜けることでのみ余地は生まれるのだ。
「行きますかね……」
『そうと決まれば』と、言わんばかりに立ち上がった真宮。
待ち伏せでもされてない限り問題はない判断。
居たとしても全員がいることもないし、残っているのは精々一人や二人だろう。
一人なら隙をついて能力を使われるより前に殴って倒す。二人なら注意を陽動して抜ける。
この時の真宮に相手方を無力化する選択肢はなかった。
『能力を打ち消す能力』、『多重能力』どちらも不透明なそれが仮にあったとしても把握できていないものを計算に入れて戦うことも逃げることも危険だ。
しかし、もしこのやり方で失敗なら自分はそんなものにすら、すがってしまうのか?
真宮は右手を見て考える。
(俺が考えたやり方での失敗。
それでもし、想定外の何かで俺が助かるようなことがあればーー
俺はちゃんと今まで通り"平凡"でいらるのか?)
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