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摺り足で音を殺しながらの背面へ移動。
いまだ思考にふけっている女を尻目に慣れない動作で逃げだす真宮。
何メートルか距離をとると先に通ったルートへ向けて疾走する。
ーーー
それと同時刻、これと同じ薄暗い路地裏に少女が立つ。
片手には機銃、常磐台中学の制服を身にまとい、暗視ゴーグルのようなデバイザーから彼女は闇を覗いていた。
覗く闇の方から語りかけるようにコツコツと軍靴の跫音が近づく。
彼女は手に握るアサルトライフルをそれに向け、言う。
「ーーこれより、第9831次実験を開始します。被験者は所定の位置へついてください」
銃口の先にそれはいた。
針金のようなか細い体躯に闇を照らすかのごとく白銀に彩られた髪が揺れる。獲物を狩るように輝く血の瞳はまぎれもなく狩る側の人間といえた。
一言で彼を形容するなら"悪魔"であろう。
「ーーちイったァ」
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