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『それは……、まだ言えません。』
「………。」
まだ……、か。
「そっか、なら無理しなくていい。でもわざわざ挨拶だけしに来たわけじゃないんだろう?」
『はい。今回は貴方の一部を解放しに。』
そう言って俺に近い付いて来る少女。
そして俺の1mくらい前で止まると、両手を開き目を閉じた。
『――告げる。』
ブワッ
そんな効果音が聞こえてきそうな勢いで俺の足元に赤い魔法陣が浮かび上がる。
一見、飛ばされた時の陣と似ていたが、円の中の図形が一部違っていた。
『我、七天の守護者。
我、天秤の守り手。』
陣は詠唱が進むにつれて段々と輝きを増してくる。
『古の契約の楔、今を縛る過去の鎖、
我が真名をもちて、朽ち果て、地にへと墜ちろ。
』
グンッ!と足元にあった魔法陣がいきなり胸元ぐらいの高さまで浮き上がってきた。
スゲーな、これ。
『我が真名は――――』
真名は聞き取れなかった。
別に声が小さかったとかじゃない。
ただ、俺にそんな余裕は無かったのだ。
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