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「どけ!こら!」
黒い詰め襟の学生服集団が、怒鳴りながらやってきた。
「翔ちゃん!翔ちゃん!」
「ん?なんだぁ?」
五月翔太が振り返った。
この五月翔太が、この竜神高校の番長である。
しかも、まだ二年である。
二年で、この学校を締めてしまったのだ。
そして驚く事に、五月は転校生であったのだ。
「飯を食いに行きましょうよ」
三年の青田利男が、一歩前にでて言った。
この青田こそが、五月翔太が転入してくるまで、竜神をの番長だったのだ。
「飯かぁ、今何時だ?」
五月が聞くと、青田は壁に掛かった時計に、チラッと視線を向けてから、
「二時です」
もちろん、午後のである。五月達が、午前に顔を見せる事は殆ど無かった。
それに、仮に午前に学校に来ても、それは、勉強をする為ではない。
五月達にとって、勤勉意欲等と言ったものは、遥かかなたに消え去って久しいのだ。
「どこに行く?」
五月が大きな伸びをしながら聞くと
「何を食べます?」
青田が、五月の隣に腰を下ろしながら聞く。
今は丁度休み時間だか、五月達にとって、休み時間等と、あって無いようなものだった。
なぜなら、好きな時に、好きな場所に行けるからで、教師も、当然見て見ぬ振りを決め込んでいる。
止める事ができないのだった。
「サッパリしたもんがいいなぁ?」
そう言って、五月が学生服のポケットから、煙草を出して口にくわえる。
一年の高田が、素早くその先に火をつけた。
五月の制服は、丈が膝した十センチはある、いわゆる、洋ランと言うやつだった。
詰め襟さえ、十センチもあるのだ。
「日本そばっすかね?」
青田も煙草を出して火をつける。
五月が青田を見て聞いた
「昨日は何を食ったっけ?」
「中華です」
「じゃあ、日本そばにしようぜ!」
五月が紫煙を吐き出しながら云った。
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