第一章

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五月達の地元は、隣の浦安市である。 東京ディズニーランドがあることで有名だ。 五月達の通う、滝沢高校も、この浦安である。 東京湾に近い所に建っている。 五月は転校生たが、浦安には縁があった。 五月の祖父が、この浦安の生まれであったのだ。 浦安から行徳までは、東京メトロ東西線で、一駅なのだ。 五月は前に、この行徳の奴等と喧嘩になったことがある。 あっと言う間に締めてしまったが、今では『浦安の五月』と云って、知らない奴はいなくなった。 名前が売れている訳だ。 しかし、面白いもので、名前が売れれば、それだけ狙われるわけで、他校から、数人連れで滝沢高校に締めに来るようになった。 「おい!二年の五月を呼んでこい!」 と凄むのである。 こうして、五月をやれば、自然と自分の名前が売れるわけである。 五月は、中学のころは自分から、他校に喧嘩をしに行ったものだが、今は売られた喧嘩しかしなくなった。 そして、五月を呼び出した奴とやる訳だが、あまり骨のある奴はいなかった。 五月にしたって、負けた事がない訳ではない。 むしろ、負ける時は徹底してやられてしまう。 なぜなら、途中で根をあげずに、向かって行くからだ。 結局、立てなくなるまで痛めつけられてしまうのだ。 それでも五月は、負けっぱなしにはしなかった。 あとからもう一度行くのだ。 「勝つまでやる!」 それが五月の哲学だった。 負けても負けても、何度でも仕返しに行くのだ。 しまいに相手の方が 「もう、わかったから・・」 と云って根をあげるのである。 「五月さーん!」 下のゲームセンターから、男達が上がって来た。 地元の不良達である。 「おっ?何だ?」 五月は、煙草の煙を、ポッポッと、輪にして吐き出しているとこだった。
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